銀行口座の凍結と相続手続き
払戻し制度・必要書類・解除までの流れ
名義人が亡くなったことを金融機関が知ると、口座は凍結されます。凍結で止まるもの、遺産分割の前に一部を払い戻せる制度の計算方法、遺言や遺産分割協議に応じた必要書類と、解除までの流れをまとめました。

この記事の結論
- 1口座は、金融機関が名義人の死亡を知った時点で凍結されます。引き落としが止まるため、公共料金やカードの支払方法を早めに切り替えます。
- 2遺産分割の前でも、各相続人は残高×1/3×法定相続分(1金融機関150万円まで)を単独で払い戻せます。例では子1人あたり180万円です。
- 3凍結を解除して払い戻すには、遺言書か遺産分割協議書と戸籍などが必要です。書類は金融機関ごとに違うため、最初に相続窓口へ連絡します。
口座が凍結されるとき
金融機関は、家族からの連絡などで名義人が亡くなったことを知ると、その人の口座での入出金を止めます。役所に死亡届を出しても、その情報が自動的に金融機関へ伝わるわけではありません。凍結は、相続人の誰かが勝手に預金を引き出して、遺産分割の前に財産が減るのを防ぐためのものです。
| 公共料金・クレジットカードの引き落とし | 止まります。支払方法を相続人の口座に切り替えます。 |
| 家賃などの振込の受け取り | 入金できなくなることがあります。賃借人に振込先の変更を伝えます。 |
| 亡くなった後に振り込まれた年金 | 亡くなった月の分までが支給対象です。それより後の月の分は返還します。 |
| 入院費・葬儀費用の支払い | 払戻し制度を使うか、相続人が立て替えて領収書を保管します。 |
凍結前に引き出すときの注意
暗証番号を知っている家族が、凍結前にATMで引き出すことはできてしまいます。しかし引き出した現金も相続財産であることに変わりはなく、遺産分割と相続税の申告に含めて扱います。
- ・いつ、いくら引き出し、何に使ったかを記録し、領収書を保管する
- ・葬儀費用や入院費など、亡くなった方の債務や葬式費用に使ったものは、相続税の計算で差し引ける
- ・自分の生活費などに使うと、相続を承認したものとみなされ、相続放棄ができなくなることがある
- ・他の相続人に黙って引き出すと、遺産分割で争いの原因になりやすい
遺産分割前の払戻し制度
2019年7月から、遺産分割が終わる前でも、各相続人が単独で預貯金の一部を払い戻せるようになりました(民法909条の2)。葬儀費用や当面の生活費に充てるための制度です。
払い戻せる金額
口座ごとに「相続が始まったときの残高×1/3×払戻しを求める相続人の法定相続分」を計算し、同じ金融機関の口座は合計で150万円が上限です。金融機関が違えば、それぞれ150万円まで払い戻せます。
- A銀行 3,000万円 × 1/3 × 1/4 = 250万円上限の150万円
- B信用金庫 360万円 × 1/3 × 1/4 = 30万円30万円
- A銀行 3,000万円 × 1/3 × 1/2 = 500万円上限の150万円
- B信用金庫 360万円 × 1/3 × 1/2 = 60万円60万円
150万円を超えて必要なとき
凍結を解除する3つのパターン
口座の凍結を解除して預金を払い戻す(または名義を変える)には、誰がその預金を取得するのかを書類で示します。遺言書があるか、遺産分割協議がまとまったかで、必要な書類が変わります。
遺言書(自筆証書遺言は検認済みのもの。法務局保管の遺言は遺言書情報証明書)、亡くなった方の死亡がわかる戸籍、取得する人の印鑑証明書
遺産分割協議書、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍と印鑑証明書
亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人全員の戸籍、払戻しを求める人の印鑑証明書

手続きの流れ
- 1. 金融機関の相続窓口(電話やウェブ)に名義人が亡くなったことを伝え、必要書類の案内と相続届の用紙を受け取る
- 2. 戸籍(または法定相続情報一覧図の写し)、遺言書や遺産分割協議書、印鑑証明書などをそろえる
- 3. 相続届に記入し、相続人の実印を押して、書類と通帳・キャッシュカードを提出する(郵送で受け付ける金融機関もあります)
- 4. 金融機関の確認が終わると、指定した口座に払い戻されるか、名義が変更される
取引のある金融機関が複数ある場合は、法定相続情報一覧図の写しを必要な通数だけ取っておくと、戸籍の束を出し直さずに並行して手続きできます。
口座の探し方と残高証明書
口座を探す
- ・通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物(定期預金の満期案内、取引報告書など)
- ・スマートフォンの銀行アプリ、証券アプリ、メールの通知
- ・確定申告書の控えにある還付金の振込先、公共料金や年金の振込先
- ・心当たりのある金融機関に、相続人であることを示して口座の有無を照会する
残高証明書を取る
相続税の申告には、亡くなった日現在の残高証明書が必要です。相続窓口で発行を依頼すると、定期預金の経過利息も計算してもらえます。名義預金や生前の大きな引き出しを確認するため、過去数年分の取引明細もあわせて取り寄せておくと、申告の準備がしやすくなります。
ネット銀行・証券会社の場合
よくある質問
銀行口座はいつ凍結されますか
金融機関が名義人の死亡を知った時点です。多くは家族からの連絡で凍結されます。役所に死亡届を出しても、その情報が自動的に金融機関へ伝わるわけではありません。
凍結された口座からお金を引き出す方法はありますか
遺産分割の前でも、各相続人が単独で一定額を払い戻せる制度があります。上限は、口座ごとの残高×1/3×その相続人の法定相続分で、1つの金融機関につき150万円までです。
払戻し制度を使うのに他の相続人の同意は必要ですか
不要です。ただし、払い戻した金額は、その相続人が遺産の一部を取得したものとして遺産分割で精算します。
150万円より多く必要な場合はどうすればいいですか
家庭裁判所に遺産分割の調停や審判を申し立てたうえで、預貯金の仮分割の仮処分を申し立てる方法があります。認められれば150万円の上限なく払戻しを受けられます。
凍結前に引き出したお金はどうなりますか
引き出した現金も相続財産として扱い、遺産分割や相続税の申告に含めます。使い道がわかるように領収書を残しておきましょう。自分のために使うと相続放棄ができなくなることがあります。
遺言書があれば手続きは簡単になりますか
遺言で預金を取得する人が単独で手続きでき、相続人全員の印鑑証明書は通常不要です。自宅で見つかった自筆の遺言書は家庭裁判所の検認が必要ですが、公正証書遺言と法務局に保管された遺言書は検認が不要です。
手続きにはどのくらいかかりますか
書類を提出してから払戻しまで、数週間かかることが多いです。書類に不備があると戻されて時間が延びるため、最初に相続窓口で必要書類を確認しましょう。
相続税の申告にはどんな書類が必要ですか
亡くなった日現在の残高証明書が必要です。定期預金は経過利息の計算も依頼します。生前の入出金を確認するため、過去の取引明細も取り寄せておくと安心です。
亡くなった方の口座がどこにあるかわかりません
通帳やキャッシュカード、金融機関からの郵便物、スマートフォンのアプリやメールを確認します。心当たりのある金融機関には、相続人であることを示して口座の有無を照会できます。
出典・参考資料
本文の制度と数値は、次の公的資料に基づいています(2026年10月30日確認)。個別の事情による判断は、税務署や税理士にご確認ください。