遺産分割協議書の書き方|
記載例と必要書類、作成の注意点
相続人全員で決めた遺産の分け方を書面にしたものが遺産分割協議書です。相続登記、預貯金の解約、相続税の申告で使います。作成までの流れ、記載例、必要書類、未成年者や認知症の相続人がいる場合の対応まで確認できます。

この記事の結論
- 1遺産分割協議は相続人全員の合意で成立し、その内容を書面にしたものが遺産分割協議書です。全員が署名して実印を押し、印鑑証明書を添えます。
- 2財産は、不動産なら登記事項証明書のとおり、預貯金なら金融機関名・支店名・口座番号まで、特定できるように書きます。後から見つかった財産の扱いも決めておきます。
- 3協議に期限はありませんが、相続税の特例は原則として申告期限(10か月)までの分割が条件です。相続登記は分割の日から3年以内に申請します。
遺産分割協議書とは
遺産分割協議とは、亡くなった方の財産を誰がどのように受け継ぐかを、相続人全員で話し合って決めることです。その合意内容を書面にまとめ、相続人全員が署名・押印したものを遺産分割協議書といいます。
法律上、協議書の作成は義務ではありません。しかし、不動産の相続登記、預貯金の解約や名義変更、株式の移管、相続税の申告では、誰が何を取得したかを証明する書類として提出を求められます。後から「言った、言わない」の争いになるのを防ぐ意味もあり、実務上はほぼ必ず作成します。
協議書がいらない場合
- ・相続人が一人だけの場合
- ・遺言書で、すべての財産について誰が取得するかが決まっている場合
- ・法定相続分どおりに共有で相続登記をする場合(ただし、その後の共有の解消には別の手続きが必要)
作成までの流れ
相続人の確定には、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍が必要です。法務局で「法定相続情報一覧図」の写しを交付してもらうと、相続登記や金融機関の手続きで戸籍の束の代わりに使えて便利です。
遺産の分け方
遺産は必ずしも法定相続分どおりに分ける必要はなく、相続人全員が合意すればどのような分け方でも構いません。分け方には次の4つの方法があります。
代償分割は協議書に明記する
書き方のルール
遺産分割協議書に決まった書式はありませんが、法務局や金融機関で使えるようにするには、次の点を押さえて作成します。
氏名、死亡日、本籍、最後の住所を、戸籍や住民票の除票のとおりに書きます。
土地は所在・地番・地目・地積、建物は所在・家屋番号・種類・構造・床面積を登記事項証明書のとおりに書きます。預貯金は金融機関名、支店名、口座の種類、口座番号まで書きます。
「長男が取得する」のように、取得する相続人と財産の組み合わせがはっきりわかるように書きます。債務や葬式費用を誰が負担するかも書いておくと安心です。
協議後に財産が見つかった場合に備え、誰が取得するか、または改めて協議するかを書いておきます。
住所は印鑑証明書のとおりに書きます。パソコンで作成しても構いませんが、署名は自署が望ましく、押印は実印で行います。
2枚以上になる場合は、ページのつなぎ目に全員の実印で契印を押します。協議書は相続人の人数分作り、各自が1通ずつ保管します。
遺産分割協議書の記載例
本籍 東京都○○区○○町○丁目○番
最後の住所 東京都○○区○○町○丁目○番○号
建物 所在 東京都○○区○○町○丁目○番地○ 家屋番号 ○番○ 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階 ○○.○○平方メートル、2階 ○○.○○平方メートル
氏名 相続 花子実印
氏名 相続 一郎実印
氏名 相続 次郎実印

財産ごとに協議書を分けて作成することもできます。たとえば、先に預貯金だけの協議書を作って解約を進め、不動産は話し合いがまとまってから別の協議書にする方法です。その場合も、それぞれの協議書に相続人全員の署名と実印が必要です。
一緒に用意する書類
| 書類 | 用途・注意点 |
|---|---|
| 相続人全員の印鑑証明書 | 協議書の実印と照合します。金融機関では発行から3か月や6か月以内のものを求められることがあります |
| 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍 | 相続人が誰かを証明します。法定相続情報一覧図の写しで代用できる手続きもあります |
| 相続人全員の現在の戸籍 | 相続人が生存していることを証明します |
| 亡くなった方の住民票の除票 | 登記簿上の住所と亡くなった方を結びつけます |
| 不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書 | 協議書に不動産を正確に書くため、また登録免許税の計算に使います |
特別な事情がある相続人がいる場合
| 相続人の事情 | 必要な対応 |
|---|---|
| 未成年者がいる(親も相続人) | 親と子の利益が対立するため、家庭裁判所で特別代理人を選任してもらい、特別代理人が協議に参加します。未成年の子が複数いれば、子ごとに特別代理人が必要です |
| 認知症などで判断能力が不十分 | 家庭裁判所で成年後見人などを選任してもらい、後見人が本人に代わって協議に参加します |
| 行方不明 | 家庭裁判所で不在者財産管理人を選任してもらい、家庭裁判所の許可を得て協議に参加してもらいます |
| 海外に住んでいる | 印鑑証明書の代わりに、現地の日本大使館・総領事館で署名証明(サイン証明)を取得します |
| 相続放棄をした | 相続人ではなくなるため、協議に参加する必要はありません。家庭裁判所の相続放棄申述受理証明書で放棄を証明します |
成年後見人は本人の利益を守る立場
期限と、相続税・相続登記との関係
- 3か月以内相続放棄・限定承認の期限(家庭裁判所への申述)
- 10か月以内相続税の申告・納付の期限。配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使うには、原則としてこの時までに分割が必要
- 3年以内相続登記の申請義務。遺産分割で不動産を取得した場合は、分割の日から3年以内
- 10年経過後特別受益や寄与分を主張できなくなり、原則として法定相続分で分けることになる
相続税の申告期限までに分割できないとき
申告期限までに分割がまとまらない場合でも、期限内に法定相続分で取得したものとして申告・納税する必要があります。その際「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、3年以内に分割が成立したときに、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を更正の請求で適用できます。
相続開始から10年が過ぎると
2023年4月1日施行の民法改正で、相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、生前贈与などの特別受益や、介護などの寄与分を原則として主張できなくなりました。2023年4月1日より前に始まった相続にもこのルールが適用されますが、猶予期間として2028年3月31日まではこの制限がかからない場合があります。
話し合いがまとまらないとき
相続人の間で合意できない場合や、話し合いに応じない相続人がいる場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てられます。調停では、裁判官と調停委員が間に入って合意を目指します。調停が成立しなければ審判に移り、裁判官が分け方を決めます。
調停や審判が成立した場合は、調停調書や審判書が遺産分割協議書の代わりになり、相続登記や預貯金の手続きに使えます。
よくある質問
遺産分割協議書は必ず作らなければなりませんか
法律上の作成義務はありませんが、相続人が複数いて遺言書で分け方が決まっていない場合は、相続登記や預貯金の解約、相続税の申告で必要になるため、実務上はほぼ必須です。相続人が一人だけの場合や、遺言書ですべての財産の取得者が決まっている場合は不要です。
遺産分割協議に期限はありますか
協議そのものに期限はありません。ただし、相続税の配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例は原則として申告期限(10か月)までに分割されていることが条件で、相続開始から10年を過ぎると特別受益や寄与分を主張できなくなります。
相続人の一人が協議に参加しないとどうなりますか
遺産分割協議は相続人全員の合意が必要で、一人でも欠けると無効です。話し合いに応じない相続人がいる場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を申し立てる方法があります。
協議書は手書きでなければいけませんか
パソコンで作成しても有効です。署名欄は各相続人が自署し、実印を押すのが一般的です。法務局や金融機関では、印鑑証明書と照合できる実印の押印を求められます。
印鑑証明書は何通必要ですか
各相続人について、提出先の数だけ必要になることがあります。原本を返してもらえる手続きも多いため、提出先ごとに原本還付が可能か確認すると取得する通数を減らせます。相続登記では有効期限はありませんが、金融機関では発行から3か月や6か月以内のものを求められることがあります。
未成年の子が相続人の場合はどうしますか
親も相続人の場合、親と子の利益が対立するため、家庭裁判所で子の特別代理人を選任してもらい、特別代理人が子に代わって協議に参加します。
遺言書と異なる分け方はできますか
遺言で分割が禁止されている場合などを除き、相続人全員(受遺者がいる場合はその人も含めて)が合意すれば、遺言と異なる内容で遺産分割をすることができるとされています。遺言執行者がいる場合はその同意も得ておくと安全です。
協議書を作った後に新しい財産が見つかったらどうしますか
協議書に「後日判明した遺産は○○が取得する」という条項があれば、その人が取得します。条項がない場合は、新たに見つかった財産について改めて協議書を作成します。
一度決めた遺産分割をやり直せますか
相続人全員が合意すればやり直すこと自体は可能ですが、税務上はやり直しで財産が移った分が贈与や交換とみなされ、贈与税や譲渡所得税がかかることがあります。
海外に住んでいる相続人がいる場合はどうしますか
日本に住民登録がなく印鑑証明書を取得できない場合は、住んでいる国の日本大使館や総領事館で署名証明(サイン証明)と在留証明を取得し、印鑑証明書と住民票の代わりに使います。
出典・参考資料
本文の制度と数値は、次の公的資料に基づいています(2026年10月29日確認)。個別の事情による判断は、税務署や税理士にご確認ください。