相続税の税務調査とは?
調査の時期と流れ、名義預金の判断基準
相続税の実地調査では、8割を超える件数で申告漏れなどが見つかっています。最も多いのは現金・預貯金で、家族名義の預金が典型例です。調査が来る時期と流れ、名義預金と判断されるポイント、加算税の税率、調査の前にできることを確認できます。

この記事の結論
- 1相続税の実地調査は年間約9,500件で、その82.3%で申告漏れなどが見つかり、1件あたりの追徴税額は867万円です(令和6事務年度)。
- 2申告漏れで最も多いのは現金・預貯金です。家族名義でも、亡くなった方のお金で亡くなった方が管理していた預金は、名義預金として相続財産になります。
- 3税務調査の事前通知の前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。気づいた時点で早めに直すことが大切です。
相続税の税務調査とは
相続税の税務調査は、提出された申告書の内容が正しいかどうかを税務署が確認する手続きです。ほとんどは納税者の協力を前提に行う「任意調査」で、自宅などを訪れて話を聞き、通帳や資料を確認する「実地調査」と、文書や電話で申告内容の確認や修正申告を求める「簡易な接触」があります。悪質な脱税が疑われる場合の強制調査(査察)は、これとは別のものです。
相続税は一生に何度もない税金で、財産の評価や範囲の判断が難しいため、悪意がなくても申告漏れが起こりやすい税目です。税務署は、亡くなった方の過去の所得税の申告や、金融機関、保険会社などから集めた資料をもとに、申告内容を確認しています。
調査の件数と追徴税額
令和6事務年度の実地調査9,512件のうち、申告漏れなどの非違があったのは7,826件(82.3%)でした。追徴税額の合計は824億円で、非違があった件数のうち13.6%では、財産の隠蔽などがあったとして重加算税が課されています。申告をしていなかった事案への実地調査も650件行われ、1件あたりの追徴税額は2,187万円でした。
実地調査は一部でも、確認は広く行われている
調査が来る時期と流れ
実地調査の連絡は、申告書を提出してから1〜2年後に来ることが多いといわれます。税務署が更正や決定をできる期間は、原則として申告期限から5年、偽りや不正な行為がある場合は7年です。
調査でよく聞かれること
- ・亡くなった方の経歴、仕事、収入、趣味
- ・亡くなる前の入院や介護の状況、お金を管理していた人
- ・家族名義の預金や保険の契約、生前の贈与の有無
- ・自宅に置いていた現金、貸金庫の有無
- ・亡くなる前後の預金の引き出しとその使い道

名義預金の判断基準
名義預金とは、子や孫、配偶者などの名義になっていても、実際には亡くなった方の財産と認められる預金のことです。国税庁は、名義にかかわらず亡くなった方が資金を出していた預金などは相続税の対象になるとしており、申告書作成時の誤りやすい事例としても取り上げています。
- お金を出したのは誰か口座のお金が亡くなった方の収入や財産から出ている
- 通帳と印鑑を管理していたのは誰か名義人ではなく、亡くなった方が保管・管理していた
- 名義人は口座の存在を知っていたか名義人が口座の存在や残高を知らず、自由に使えなかった
- 贈与として成立しているか贈与契約書や受け取った側の管理がなく、年110万円を超えても贈与税の申告がない
贈与として認められるためには
贈与は、あげる人の「あげる」という意思と、もらう人の「もらう」という意思がそろって成立します。家族の口座にお金を移していても、もらう側がそのことを知らず、通帳や印鑑を親が持っていた場合は、贈与ではなく名義預金と判断されやすくなります。
- ・贈与のたびに贈与契約書を作り、双方が署名する
- ・もらった人が自分で通帳と印鑑を管理し、自由に使える状態にする
- ・現金の手渡しではなく、口座振込で記録を残す
- ・年110万円を超える贈与は、翌年3月15日までに贈与税の申告をする
亡くなる前の贈与は加算される
ほかに指摘されやすい財産
亡くなった時点で自宅や貸金庫にあった現金も相続財産です。過去の預金の引き出し状況から、手元に現金があったはずだと指摘されることがあります。
亡くなる前に引き出したお金のうち、使い道が説明できず残っているものは相続財産です。葬儀費用の支払いに充てた場合も、預金としてではなく現金として申告に含め、葬式費用は別に差し引きます。
証券会社の口座や、配当の受け取りだけが続いている株式、家族名義の証券口座も確認されます。
亡くなった方が保険料を払い、家族を被保険者にしていた保険は、解約返戻金相当額が相続財産になります。
家族や会社に貸していたお金、亡くなった後に入金された給与や家賃なども相続財産です。
申告漏れがあったときの加算税と延滞税
申告した税額が少なかった場合は、不足分の税額に加えて過少申告加算税と延滞税がかかります。申告をしていなかった場合は無申告加算税です。いずれも、税務調査の事前通知の前に自主的に申告すれば大きく軽くなります。
| 修正申告をした時期 | 税率 |
|---|---|
| 税務調査の事前通知の前に自主的に修正申告 | かからない |
| 事前通知の後、調査で指摘される前に修正申告 | 5%(期限内申告税額と50万円の多い方を超える部分は10%) |
| 税務調査で指摘された後 | 10%(期限内申告税額と50万円の多い方を超える部分は15%) |
| 申告した時期 | 50万円まで | 300万円まで | 300万円超 |
|---|---|---|---|
| 税務調査の事前通知の前に自主的に申告 | 5% | 5% | 5% |
| 事前通知の後、調査で指摘される前に申告 | 10% | 15% | 25% |
| 税務調査で指摘された後・税務署の決定 | 15% | 20% | 30% |
延滞税は、本来の納期限の翌日から納付する日までの日数に応じてかかります。2026年の割合は、納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以後が年9.1%です。延滞税の割合は毎年見直されます。
調査に備えてできること
亡くなる前の数年分の入出金を確認し、まとまった引き出しや家族への振込の理由を説明できるようにしておきます。
配偶者や子、孫の名義の預金や証券口座について、お金の出どころと管理していた人を確認し、名義預金に当たるものは申告に含めます。
財産の評価資料、贈与契約書、遺産分割協議書、領収書などは、申告期限から少なくとも7年は保管しておくと安心です。
事前通知の前の修正申告なら過少申告加算税はかかりません。払いすぎに気づいた場合は、申告期限から5年以内であれば更正の請求で還付を受けられます。
よくある質問
相続税の税務調査はどのくらいの割合で来ますか
国税庁によると、令和6事務年度(2024年7月〜2025年6月)の相続税の実地調査は9,512件でした。年間の申告件数は16万件を超えるため、実地調査を受けるのは一部ですが、文書や電話で申告内容の確認を求める「簡易な接触」も21,969件行われています。
税務調査はいつ来ますか
申告書を提出してから1〜2年後に連絡が来ることが多いといわれます。税務署が更正や決定をできる期間は、原則として申告期限から5年(偽りや不正がある場合は7年)です。
税務調査で申告漏れが見つかる割合はどのくらいですか
令和6事務年度の実地調査では、82.3%で申告漏れなどの非違が見つかり、1件あたりの追徴税額は867万円でした。
何が申告漏れとして指摘されやすいですか
申告漏れ財産の内訳で最も多いのは現金・預貯金等で、全体の29.1%を占めます。家族名義の預金(名義預金)、自宅に保管していた現金、亡くなる前に引き出した預金などが代表例です。
名義預金とは何ですか
子や孫などの名義になっているものの、実際には亡くなった方のお金で、亡くなった方が管理していた預金のことです。名義にかかわらず亡くなった方の財産として相続税の対象になります。
毎年110万円以下で贈与していれば名義預金になりませんか
金額が110万円以下でも、贈与が成立していなければ名義預金と判断されることがあります。贈与は、あげる人ともらう人の合意で成立するため、もらった人が口座を知らず、通帳や印鑑を親が管理していた場合は贈与とは認められにくくなります。
税務調査の前に間違いに気づいたらどうすればいいですか
税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。延滞税はかかりますが、早いほど少なく済みます。
税務調査は断れますか
通常の税務調査は任意調査ですが、調査官には質問や帳簿書類の確認をする権限があり、正当な理由なく拒むと罰則の対象になることがあります。日程の都合が悪い場合は変更を相談できます。
申告しなかった場合も税務調査は来ますか
来ます。令和6事務年度には、申告していなかった事案への実地調査が650件行われ、1件あたりの追徴税額は2,187万円でした。税務署は死亡届の情報や過去の所得税の申告、金融機関などの資料をもとに相続財産を把握しています。
出典・参考資料
本文の制度と数値は、次の公的資料に基づいています(2026年10月29日確認)。個別の事情による判断は、税務署や税理士にご確認ください。